日本酒の魅力 クールジャパンを海外へ
株式会社フリーモーション
代表取締役社長 山田治さん
1963年生まれ。2012年に株式会社フリーモーションを創業。
映像制作を強みに持ち日本酒ビジネスを展開している株式会社フリーモーション。
同社の社長であり、親しみやすいカリスマ性を持つ山田治さんに、起業のきっかけや会社に対する想いを伺いました。
サラリーマンからの独立 やりたいことを形に
―御社の事業内容について教えてください。
フリーモーションは、SAKE Master という日本酒の海外輸出事業をしています。以前活動していた映像制作事業を日本酒のPRにも応用させていることが強みですね。はじめは、クールジャパンの文化を世界へ広めたいという想いのもとはじめたサービスで、個人向けにも法人向けにも日本酒の輸出を行っています。もともとは日本酒の魅力を個別に伝えようと個人向けが多かったのですが、現在はB to Bの取引にも注力していて、事業の幅を拡大させています。国で言うと、アメリカやオーストラリアは多いですね。沖縄には直販のショップを出していて、やはり海外の方からの人気が強いです。日本食が流行りはじめているように、日本酒も飲んでみれば海外の方にもすぐに受け入れてもらえました。
―起業のきっかけどのようなものだったんですか?
フリーモーションは、もともと映像制作の会社でした。これが私の最初の起業です。きっかけというと映像制作会社のサラリーマン時代に、お客様から受けた仕事を自社では扱いきれないという事案が起こったんです。それが何だかもどかしくて。そこで、だったら自分で会社を作って受けてしまおうと思って半年ほどかけて作ったのが、今のフリーモーションです。既成概念にとらわれない自由な発想でイノベーションを実行するという想いが、名前の由来になっています。
そこでは、「世界豪華客船紀行」という番組を制作しBSで放送していました。なので最初は、映像制作の会社がスタートで、日本酒は全く関係ありませんでした。
―どのようなきっかけで日本酒に興味を持たれたんですか?
最初から、日本酒を世界へ広めたいと思っていたわけではないんです。日本の文化、クールジャパンを海外に広めたいという想いがはじまりです。サラリーマン時代に旅行や映像関連の会社で働いていたので、海外の文化を日本人に伝えたり、映像を使って魅力を発信する仕事をしていました。そこでいくら僕らがその土地について勉強して準備しても、その土地ならではの良さは、現地の人しか分からないと思ったんです。それで僕にできることは、日本の文化を海外に広めることだと気付いたんです。日本酒というのは、その想いを実現するために選んだというのが経緯なので、目的はクールジャパンを世界へ発信すること。ツールとして日本酒を使っているというイメージです。そうやって始まった事業でしたが、お酒好きだったというのもあり、いまでは日本酒の魅力にどっぷりハマっています。
とにかくやんちゃな学生時代 「お調子者でした」
―小中学生の頃はどんな学生だったのでしょうか?
見てわかるようにお調子者でした。この性格は治らないですね。今でもずっと変わりません。でも何ででしょうね、両親はいたって真面目な公務員だったんですけど、こんな明るい性格になりました。学校ではクラスの中心にいて、いつもワイワイとやっていた気がします。まぁ勉強とかはできなかったので、生徒会長とかをやるような学生ではなく、田舎を友達と走り回っていました。
両親の仕事はお堅い仕事なので、商売っ気とか、起業するとかもなく、ましてや日本酒を売るなんてのは全く考えつかなかったです。時代も高度経済成長期でしたし、その中をコツコツ生き抜いてきたような気がします。そう考えると、いま起業して事業をはじめるようなきっかけや脈略はまだこの頃はなかったみたいですね。卓球部にも所属していたのですが、特別目立ちたいという想いは強くなかったですし。
―やんちゃな失敗談はありますか?
かっこいい話をするより、失敗談を話した方が、人となりが伝わりやすいですよね。 初めて彼女ができたのが高校生だったんですけど、その初デートですかね。お金もなかったので、公園でデートしていたらブランコから落ちて救急車を呼ばれたり。仲間うちでお酒を飲みすぎて、粗相をしてしまったこともあります。(笑)
まぁでもこのくらいだったら、至って普通な学生なんじゃないですかね。会社を立ち上げてから、取材を受けたりすることも多くなったので、仲間うちから一目置かれたりすることもありますが、結局昔はどんな経営者もやんちゃしてたんじゃないですかね。成功している部分だけ切り取られがちですけど、それこそもっと大きな会社の経営者の方なんかも、失敗談なんてたくさんあると思います。そういう方のほうが人間としても味が出ますし、面白い人間になれると思います。失敗談はたくさんあったほうがいいですよ。
―卒業後からのお仕事を教えてください。
卒業してすぐ、旅行会社に入社し、その後は番組制作の会社でも働いていました。なんか昔から地図が好きだったんです。それで学生の頃から、海外に行ってみたいという思いがものすごく強かった。その影響で、旅行会社に就職して、そこで海外にはたくさん行きましたよ。一般的じゃないところで言うと、チベットとか南米の方など様々なところに行きました。特に僕は、外国人に対してのアレルギーはないんですよ。だから、すぐに現地で仲良くなれるので、すぐに他の人が知らないような現地の良さを教えてもらえる。それで、海外の魅力を日本人に伝えたりすることが多かったですかね。そこに番組制作という武器が加わって、今の会社が立ち上がったのかもしれません。
日本人が発信していく世の中に 時代は変わっている
―会社に対する想いをお聞かせください。
立ち上げから試行錯誤していますが、自分の想いを形にして実現できるのがやりがいになっています。ビジネスだけのことを考えたら、輸入ワインを安く仕入れて、日本に売ったりした方が、原価率とかも考えると、ビジネスとしては良いんですよ。でも僕がやりたいことはそうじゃない。クールジャパンを世界へ発信したいんです。この想いだけは変わらない。
東京オリンピックもありますし、日本の魅力を日本人である僕らが発信していける世の中になったら、日本はもっと良い国になっていきますよ。
―今後の会社の展望はありますか。
日本酒をもっともっと世界に広めたい。日本には今、1200くらい蔵元という日本酒を作る場所があります。ブランドで言うと1万種類くらいあるんじゃないですかね。そして最近、意外と日本酒を広めようとしている動きが出てきています。試飲のイベントがやっていたり、エバンジェリストが出てきてたりするんです。そこに対して、僕らの強みが発揮できるのは、酒蔵さんと消費者を繋げることだと思っています。酒蔵のオーナーが直接海外に営業したりしているところも多いんですけど、なかなかうまくいかないんですよね。だからこそ、酒蔵さんには日本酒を作ることに集中してもらって、消費者が購入するまでのプラットホームを僕らが作っていきたい。日本酒流通の世界は熟知しているので。
そのために、酒蔵さんとの提携の数を増やすのと、関係性を強めていきたいです。我が社の強みは、酒蔵さんに対して総合的なアドバイスが出来ることです。ラベルを変えるだけで成功する場合もありますし、強みである映像を使ったり、インターネットを利用したダイレクト販売のアドバイスまでできるので、時代にあった日本酒の発信ができると思います。
―最後に、起業を目指す人へアドバイスをお願いします。
自分の世代は、起業する人なんていなかったですし、転職すら、したら出世できないとかいう環境でした。でも今は、情報も入手しやすいし、起業する人も増えてきた。1円でも起業できてしまう時代ですもんね。そういう意味ではかなり羨ましいですよ。僕が今、20代とかだったら真っ先に独立することを考えますよ。早いうちにチャレンジして失敗したとしても、社会的な制度は整っていますので、再チャレンジの世の中になってきていると思います。
でも自分で事業を始めるなら、金儲けとかじゃなくて、自分の想いをどう形にしていくかというビジョンがないと迷ってしまうと思います。サラリーマン時代と今を比べると、自分のやりたいことがストレスなく形にできるかどうかというのが1番違うところですね。サラリーマンを経験したからこそ、世の中の仕組みを学べたので、もう独立するのは遅いと思っている方でも、どんどん挑戦するべきだと思います。
起業は、生きるか死ぬかみたいなイメージがあると思います。そのくらいの覚悟は必要ですが、失敗したからって死ぬわけじゃありません。環境も整ってきている今、自分の想いを形にする挑戦をしてもいいんじゃないでしょうか。
PROFILE
プロフィール
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- 株式会社フリーモーション
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代表取締役社長山田治さん
1963年生まれ。2012年に株式会社フリーモーションを創業。