株式会社ベネフィット・ワン
代表取締役社長白石 徳生
Norio Shiraishi
1967年生まれ。拓殖大学政経学部卒業。米国でのインターンを経て株式会社パソナジャパンに入社。1996年に株式会社ビジネス・コープを創業。2000年に同社代表取締役社長となる。2001年に社名をベネフィット・ワンへ変更し、2004年にJASDAQ上場、2006年には東証二部を果たす。
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『ベネフィット・ステーション』という総合型福利厚生サービスを主な事業としています。従業員満足度を向上し、健康経営やスキルアップを促進できるようなメニューを取りそろえています。
モノの流通は様々な企業が力を入れて成熟していましたが、サービスの流通に関しては未成熟なマーケットなんです。そのため企業から年会費をいただく代わりに従業員に良いサービスを安く便利に提供する仕組みを作りました。イメージで言うと、消費者はサービス購入時に、販売会社にあまり意識しないまま何%かの手数料が上乗せされた代金を支払っています。それに対して当社では会費をいただいている分、1万円のサービスは1万円でスムーズに提供できるわけです。コストコの会員制をモノではなく、サービスで実現しているイメージですかね。
現在は企業会員約430万人、個人会員約330万人、計760万人のお客様にご利用いただいています。『ベネフィット・ステーション』はOEMの形でもご提供しており、通信事業者様やスポーツクラブ運営企業様などが会員向けのオプションサービスとして導入されるケースも多くあります。
もともと、学生時代から起業しようと思っていたんですよ。学生時代はパソナのインターンシップを米国で経験し、卒業後は少し米国でビジネスを立ち上げてから、パソナジャパンに就職しました。起業するならグローバルで通用するような巨大な企業を作りたいという気持ちがありましたから、ガリバーと呼ばれる巨大企業がまだいない大きなマーケットを働きながら探していたんです。
そうして28歳くらいの時に、サービスに実は流通が存在せず、つくるのも提供するのも同じ会社がやっていることに気づきました。唯一、旅行業界は運輸会社と旅行会社が分かれていましたけどね。モノであれば流通がありますから、たとえば家電量販店に行けばさまざまなメーカーの製品が並んでいて、店員に相談しながら比較検討した上で購入できます。でも、サービスには流通が存在しないためそれができず、宣伝広告を多く出した企業のサービスを消費者は購入してしまう。宣伝に費用をかけただけ料金が高く、必ずしも良いものとは限らないのに、です。これでは健全なマーケットになっていかないと感じました。
ちょうど当時1995年に、パソナグループの『社内ベンチャーコンテスト』があり、私の考えたインターネットを使ったサービス流通のアイデアを事業プランとして応募しました。そのアイデアが高く評価され、社内ベンチャー第1号として起業することになったのです。
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中学生くらいからですね。実家は自営業を営んでいましたし、父の兄弟も全員自営業者でしたから、自分もいずれ事業をやるんだろうと思っていました。家庭環境は大きく影響していたと思います。その後、大学生のころには友人も将来は家業を継ぐとか起業するという人ばかりになっていて、積極的にサラリーマンになるという選択はなくなっていました。
縁あってパソナジャパンに入社して営業のトップになったこともありましたが、友人がどんどん起業していく中で、いつまでもサラリーマンであることに後ろめたさすら感じていましたよ。安定を求めるという考えがそもそもありませんでしたし、早く中途半端な状態を脱したいという気持ちが大きかったですね。
実家が八王子の繁華街に近いエリアにあったんですよ。だから小学生のころからパチンコ屋さんやキャバレーのホステスさんなんかと昼間から会話して、街の刺激的な情報の中で遊んでいました。そうしているうちに、子どもながらに情報の大切さがわかるようになってくるんです。
私は小学生のころから情報通で、「明日開店するラーメン屋では、オープン記念で300円のラーメンが20円で食べられるらしい」とか、どこに行くとコーラのくじ付きの王冠が眠っているかっていう情報を持っていました。当時はコーラの王冠にくじが付いていて当たると10円とかに換金してもらえたんですが、お店で捨てられた王冠を回収してまとめてある場所があったんですよね。それを探し当ててお小遣いにしていました。やんちゃな子どもでしたね。
そうですね。昔から好奇心旺盛だったということが影響しているのかもしれません。社員に対して研修でも言うことなんですが、仕事で一番大事なことは好奇心だと思うんですよね。情報こそがビジネスのタネになるわけですが、何かを知りたいという気持ちがないと情報収集はできません。次に大事なのは想像力です。集めた情報をどうするのかを想像することによって、未来が見えてきますよね。これがアイデアになるわけです。
その先をお話しすると、次にするのは思い描いた未来に向けて動き出すこと。好奇心があって想像力がある人は結構いますが、やらない人が多いんですよ。動き出すには十分な想いがないといけない。好奇心や想像力を持つのは、訓練次第でできます。ただし、想いの部分は生まれ育った環境で培われたものだったり、生まれ持ったものだったりします。私の場合は、起業するのは当たり前という環境が影響しているように思います。
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大切にしていることは2つあります。1つは企業文化上、社員みんなに正しいことをちゃんとやってもらえるようにすること。企業は当然利益を追求するものですが、悪いことをしたほうが利益は簡単に出せてしまいます。でも、それでは長続きしないでしょう。当たり前のことですが、正義感を持って利益を拡大させなくてはいけません。もう1つは、従業員の意識レベルを適切に設定することです。伸びている会社と伸びてない会社には、実は大きな違いはないんですよ。人間が考えることは、みんな同じなんです。では何が違うかというと、意識のレベル感が違うわけです。
スピードや正確性はどこの会社でも追及していますが、クイックレスポンスと言いながらも、0.1秒でやる会社と1秒でやる会社とがあるんです。あるいは、正確さで1000分の1でミスを起こすか1万分の1でミスを起こすか。それぞれが同じことを目指しているにもかかわらず、意識のレベルによって差がついてしまうんですね。
集団で仕事をする場合には、みんながどのレベルで納得したかによって結果が変わってきます。伸びている会社に共通していることは、「ここまでやればいい」というレベル設定が高いということです。トップは、そのレベルを適切に設定しなければいけません。あまり行き過ぎても、社員を疲弊させるブラック企業になってしまいますから。会社のスペックは、この正義感と意識レベルの2点で決まってしまうものです。
当社の目標は、世界中の人たちに対してあらゆるサービスを定額課金で提供することです。いずれ海外にも展開し、美容室、居酒屋、レストラン、映画館、劇場、医療などのサービスもインターネットを通じて提供していくことを考えています。そのためには、在庫情報がシステムに入力されている環境が整う必要があります。飲食店なども以前は紙で予約管理をしていましたが、最近ではインターネットで予約できるようになってきていますよね。当社はそうした世の中の在庫情報のIT化を待ちながら、それらをインターネットでつなぎ、予約できるようにしようとしているんです。
社会が変化するスピードは日に日に速くなっています。この先、科学技術がますます発達していくと、たとえば発電効率が劇的に良くなって食糧生産や工業生産がローコストでできるといったことが起こるでしょう。遺伝子操作の技術も発達して、何もしなくても食料や生活に必要なものが増やせるようになったら、働くことの意味が今とは大きく変わります。そんな時代が、あと30年くらいで到来するかもしれないのです。
この変化の時代に何をすべきかというと、一瞬の価値が非常に高いということに気づいて今を大事にする意識をもつことです。起業したいと思った瞬間はワクワクしていても、時間が経つと不安な気持ちが出てくることってありますよね。でも、今がずっと続いて未来になるのですから、過去を悔やんだり未来を不安に思ったりしていないで、今を楽しみ続けるべきなんです。それが、起業したいと思った時のワクワク感を維持する秘訣でもあるんですよ。
株式会社ベネフィット・ワン代表取締役社長
白石 徳生Norio Shiraishi
1967年生まれ。拓殖大学政経学部卒業。米国でのインターンを経て株式会社パソナジャパンに入社。1996年に株式会社ビジネス・コープを創業。2000年に同社代表取締役社長となる。2001年に社名をベネフィット・ワンへ変更し、2004年にJASDAQ上場、2006年には東証二部上場を果たす。
社名 | 株式会社ベネフィット・ワン |
事業内容 | 福利厚生事業 |
設立年月日 | 1996年3月15日 |
資本金 | 15億27百万円(2024年3月末現在) |
連結従業員数 | 1,192名 |
会社住所 | 【東京】 |